イギリスの地方劇場及び英国芸術評議会の各種事業活動調査報告書その1
- 2014-10-6
2014.6.1~9
訪問地:グラスゴー・シチズンシアター、リバプール:エヴリマン&プレイハウス、リーズ:ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス、シェフィールド・シアター、レスター:カーブシアター、マギー・サクソンのセミナー
仙南芸術文化センター(えずこホール)
所 長 水戸雅彦
6月2日(月)グラスゴー・シチズンシアター
研修初日。今回の研修のメインは「ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス」なのだが、そこに至る前に、グラスゴー・シチズンシアターで、まず大きな衝撃を受けた。それほど素晴らしい考え方で事業を展開していたのである。
グラスゴーは、かつて重工業の盛んな都市として栄えたが、時代の流れとともに大きく衰退、一時大量の失業者とともに街の荒廃が進んだ。それを再興したのがアートによる街づくり、クリエイティブシティである。その功績により欧州文化都市に選定されたのはつとに有名な話である。
グラスゴー・シチズンシアターは、1876年に建設された建物であり、それを何度か改修しているが、既存の建物を生かし、それに増築を重ねる形で現在の形となっている。古い建物をきちんと生かしながら、新たな機能をどんどん付けたしていっているのである。驚くべきは、舞台は少々古めかしいのだが、設備は完璧に整っていることである。ウッドワークショップ、メタルワークショップはしっかり整備されており、ワードローブ(衣装部)は、古着屋さん二軒分ものスペースがある。それでいて舞台機構の木造の人力で動かす機構もちゃんと残っているのである。
劇場の目的は、良質の作品を安価なチケットで提供すること。ゴーバル(地元地区)の人たちには特に安く提供している。学生や失業者は50ペンス(約90円)、ほとんどただのような値段である。一時無料で提供していたのだが、クリエイティブスコットランド(旧スコティッシュカウンシル、財政支援団体である。毎年150万ポンド(約2億7千万円)の支援を受けている)からチケットは売るものだとの指摘を受けて廃止。それでも現在、100枚限定で50ペンスのチケットを販売している。早い者勝ちだそうである。ちなみに年間の観客数は7万人、普及事業参加者は2万5千人だそうである。
さて、イギリスの地域劇場はどこでも、アウトリーチ、普及事業(エデュケイションプログラム)とコミュニティプログラムを実施しているのだが、ここもとても素晴らしいプログラムを実施している。以下いくつか紹介すると。
・プリズンプロジェクト:通年で3ピリオド開催している刑務所の受刑者向け事業。多くの受刑者が読み書きがあまりできない等の理由で出たり入ったりしている状況があることから、それらを改善しながら演劇作品作りに取り組むことにより受刑者の自信回復を図る。観客は、受刑者及び家族、友人などの関係者。一人の囚人に年間5万ポンド予算がかかっているから、二人の囚人が社会復帰すればそれで予算はペイしているとのことである。
・小学校のドラマ事業:イギリスでは、カソリックとプロテスタントの対立が大きな社会問題となっている。そこで、対立している44校(カソリック、プロテスタント約半々)を対象に混合でキャスティングし演劇作品を作り、学校の体育館で上演した。そして、それをこどもたち、保護者に見せた。
このようなプロジェクトをさまざまな住民を対象に実施している。これらの話を聞きながら、日本がいかに遅れているのかを再確認した。アートは一部の嗜好者のためにあるのではない。すべての人間が創造的に活性化するためにあるのだとの感慨を強く持った。
▲グラスゴー・シチズンシアター外観
▲運営スタッフより詳細説明を受ける
▲古い舞台機構がそのまま残っている。
▲古着屋2軒分もありそうなワードローブ。
「その2」へ続く
訪問地:グラスゴー・シチズンシアター、リバプール:エヴリマン&プレイハウス、リーズ:ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス、シェフィールド・シアター、レスター:カーブシアター、マギー・サクソンのセミナー
仙南芸術文化センター(えずこホール)
所 長 水戸雅彦
6月2日(月)グラスゴー・シチズンシアター
研修初日。今回の研修のメインは「ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス」なのだが、そこに至る前に、グラスゴー・シチズンシアターで、まず大きな衝撃を受けた。それほど素晴らしい考え方で事業を展開していたのである。
グラスゴーは、かつて重工業の盛んな都市として栄えたが、時代の流れとともに大きく衰退、一時大量の失業者とともに街の荒廃が進んだ。それを再興したのがアートによる街づくり、クリエイティブシティである。その功績により欧州文化都市に選定されたのはつとに有名な話である。
グラスゴー・シチズンシアターは、1876年に建設された建物であり、それを何度か改修しているが、既存の建物を生かし、それに増築を重ねる形で現在の形となっている。古い建物をきちんと生かしながら、新たな機能をどんどん付けたしていっているのである。驚くべきは、舞台は少々古めかしいのだが、設備は完璧に整っていることである。ウッドワークショップ、メタルワークショップはしっかり整備されており、ワードローブ(衣装部)は、古着屋さん二軒分ものスペースがある。それでいて舞台機構の木造の人力で動かす機構もちゃんと残っているのである。
劇場の目的は、良質の作品を安価なチケットで提供すること。ゴーバル(地元地区)の人たちには特に安く提供している。学生や失業者は50ペンス(約90円)、ほとんどただのような値段である。一時無料で提供していたのだが、クリエイティブスコットランド(旧スコティッシュカウンシル、財政支援団体である。毎年150万ポンド(約2億7千万円)の支援を受けている)からチケットは売るものだとの指摘を受けて廃止。それでも現在、100枚限定で50ペンスのチケットを販売している。早い者勝ちだそうである。ちなみに年間の観客数は7万人、普及事業参加者は2万5千人だそうである。
さて、イギリスの地域劇場はどこでも、アウトリーチ、普及事業(エデュケイションプログラム)とコミュニティプログラムを実施しているのだが、ここもとても素晴らしいプログラムを実施している。以下いくつか紹介すると。
・プリズンプロジェクト:通年で3ピリオド開催している刑務所の受刑者向け事業。多くの受刑者が読み書きがあまりできない等の理由で出たり入ったりしている状況があることから、それらを改善しながら演劇作品作りに取り組むことにより受刑者の自信回復を図る。観客は、受刑者及び家族、友人などの関係者。一人の囚人に年間5万ポンド予算がかかっているから、二人の囚人が社会復帰すればそれで予算はペイしているとのことである。
・小学校のドラマ事業:イギリスでは、カソリックとプロテスタントの対立が大きな社会問題となっている。そこで、対立している44校(カソリック、プロテスタント約半々)を対象に混合でキャスティングし演劇作品を作り、学校の体育館で上演した。そして、それをこどもたち、保護者に見せた。
このようなプロジェクトをさまざまな住民を対象に実施している。これらの話を聞きながら、日本がいかに遅れているのかを再確認した。アートは一部の嗜好者のためにあるのではない。すべての人間が創造的に活性化するためにあるのだとの感慨を強く持った。
▲グラスゴー・シチズンシアター外観
▲運営スタッフより詳細説明を受ける
▲古い舞台機構がそのまま残っている。
▲古着屋2軒分もありそうなワードローブ。
「その2」へ続く