英国地域劇場スタディーツアー その1-3
- 2014-9-18
(下斗米つづき)
一過性ではないプログラムづくり・・これがポイントです。
6月5日(木)。ウエストヨークシャー・プレイハウス2日目です。この日は劇場のすぐ横のビルにいきました。ここには「First Floor」(写真7)というプログラムのためのスタジオが1階(日本的には2階)にあり、その上には衣裳置場があります。
この「First Floor」がまたまたすごい。麻薬に手を染めり、不登校だったりという
(写真7)
問題のある若者を集めて10のアクティビティー(ダンス、ドラマ、美術など)を用意しており、プロの講師がしっかりと指導していき、最終的には舞台やCDでの発表を実際に行っていくのだそうです。でももっとすごいのは、このコースを卒業すると大学への受験資格が取得できるということ。つまり問題児たちをきちんと社会復帰させるプログラム作りが出来ている点。きちんと最後まで責任を持つというこのシステムは本当に感心しました。他にもすごいプログラムは幾つもあるのですが、これらはまた他の報告者からのエッセイに任せることにして、ウエストヨークシャー・プレイハウスの説明はこれでお仕舞いにします。
一過性ではないプログラムづくり・・これがポイントです。
6月6日(金)。シェフィールドのクルシーブル劇場(写真8)とライシュン劇場
(写真8)
を視察しました。この二つの劇場はシェフィールド劇場という組織(日本的にいうと一種のNPO法人)が経営しています。非常に近代的な建物のクルシーブルとオーソドックスなイメージのライシュン(写真9)という、まったく違ったタイプの劇場を
(写真9)
実に上手く使った経営で、ここはいま英国でも一番ホットな場所といわれているところです。ポピュラーなミュージカルや昔懐かしい古典ものをやる一方で、ものすごく先鋭的で、実験的なものも制作しており、幾つかの作品はウエストエンドでも取り上げられているとのこと。でも、ここでもやはり社会的なプログラムもきちんとやっていました。これは他の劇場でも盛んなのですが、例えば「ユース・シアター」、文字通り若者を集めて、プロの演出家が指導して作品づくりをして行くプログラムですが、まったく英語も話せなく、孤独なソマリアの難民少女がしだいになじんで行くというような、現代のシリアスな問題をテーマに取り上げたものや、「シェフィールド・ピープルズ・シアター」というシェフィールド市民から募集した素人をここの劇術監督が指導して芝居づくりをするというようなプログラムなどです。いままでグラスゴーのシチズンズ・シアター。リバプールのエブリマン・シアター、リーズのウエストヨークシャー・プレイハウスそしてこのシェフィールド劇場と視察して来て思うのは、劇場の役目として、素晴らしい作品を鑑賞して貰うということだけではなく、劇場自身で作品づくりをして行く一方、それぞれの地域の様々な問題、貧困、犯罪、老人などの解決に地域の各行政機関と協働で立ち向かっていく姿でした。これが英国の劇場が日常的に人で賑わい、地域に溶け込み、信頼されている一番の要因だという気がします。日本の劇場も早く、こうした姿に近づきたいものです。
英国にも、とんでもなく使いづらい設計の劇場は、あった。
6月7日(土)。この日は一昨年前の世界劇場会議国際フォーラム2013にも来ていただいた劇場コンサルタントのマギー・サクソンさんのセミナーの日。会場はレスターのカーブ・シアター。この劇場はカーブという名の通り建物全体がガラス張りの円形ビル。ものすごくモダンで斬新なデザイン。しかし案内してくれたこの劇場の副支配人によると、あまりにも奇抜なデザインなのでものすごく使いづらいとのこと。円形のビルの中に劇場をぐるりと取り囲んだ形で通路があるので、劇場の袖は左右ともほとんど無し。搬入口も円形ビルの外からで、一般の人が通る通路をまたいで運び込まなければならないとのこと。もっとすごいのは楽屋。通路をまたいでエレベーターに乗り2階まで上がらなければ楽屋へは行けないので、衣裳に着替えた役者たちはそのままの姿で通路を通って舞台袖に入るという、信じられない構造になっているのだ。見学を終えて一同の感想は、“イギリスにも、設計家のエゴによるひどい劇場はあるのだな〜”と妙に納得(写真10)。
(写真10)
以上
下斗米 隆
一過性ではないプログラムづくり・・これがポイントです。
6月5日(木)。ウエストヨークシャー・プレイハウス2日目です。この日は劇場のすぐ横のビルにいきました。ここには「First Floor」(写真7)というプログラムのためのスタジオが1階(日本的には2階)にあり、その上には衣裳置場があります。
この「First Floor」がまたまたすごい。麻薬に手を染めり、不登校だったりという
(写真7)
問題のある若者を集めて10のアクティビティー(ダンス、ドラマ、美術など)を用意しており、プロの講師がしっかりと指導していき、最終的には舞台やCDでの発表を実際に行っていくのだそうです。でももっとすごいのは、このコースを卒業すると大学への受験資格が取得できるということ。つまり問題児たちをきちんと社会復帰させるプログラム作りが出来ている点。きちんと最後まで責任を持つというこのシステムは本当に感心しました。他にもすごいプログラムは幾つもあるのですが、これらはまた他の報告者からのエッセイに任せることにして、ウエストヨークシャー・プレイハウスの説明はこれでお仕舞いにします。
一過性ではないプログラムづくり・・これがポイントです。
6月6日(金)。シェフィールドのクルシーブル劇場(写真8)とライシュン劇場
(写真8)
を視察しました。この二つの劇場はシェフィールド劇場という組織(日本的にいうと一種のNPO法人)が経営しています。非常に近代的な建物のクルシーブルとオーソドックスなイメージのライシュン(写真9)という、まったく違ったタイプの劇場を
(写真9)
実に上手く使った経営で、ここはいま英国でも一番ホットな場所といわれているところです。ポピュラーなミュージカルや昔懐かしい古典ものをやる一方で、ものすごく先鋭的で、実験的なものも制作しており、幾つかの作品はウエストエンドでも取り上げられているとのこと。でも、ここでもやはり社会的なプログラムもきちんとやっていました。これは他の劇場でも盛んなのですが、例えば「ユース・シアター」、文字通り若者を集めて、プロの演出家が指導して作品づくりをして行くプログラムですが、まったく英語も話せなく、孤独なソマリアの難民少女がしだいになじんで行くというような、現代のシリアスな問題をテーマに取り上げたものや、「シェフィールド・ピープルズ・シアター」というシェフィールド市民から募集した素人をここの劇術監督が指導して芝居づくりをするというようなプログラムなどです。いままでグラスゴーのシチズンズ・シアター。リバプールのエブリマン・シアター、リーズのウエストヨークシャー・プレイハウスそしてこのシェフィールド劇場と視察して来て思うのは、劇場の役目として、素晴らしい作品を鑑賞して貰うということだけではなく、劇場自身で作品づくりをして行く一方、それぞれの地域の様々な問題、貧困、犯罪、老人などの解決に地域の各行政機関と協働で立ち向かっていく姿でした。これが英国の劇場が日常的に人で賑わい、地域に溶け込み、信頼されている一番の要因だという気がします。日本の劇場も早く、こうした姿に近づきたいものです。
英国にも、とんでもなく使いづらい設計の劇場は、あった。
6月7日(土)。この日は一昨年前の世界劇場会議国際フォーラム2013にも来ていただいた劇場コンサルタントのマギー・サクソンさんのセミナーの日。会場はレスターのカーブ・シアター。この劇場はカーブという名の通り建物全体がガラス張りの円形ビル。ものすごくモダンで斬新なデザイン。しかし案内してくれたこの劇場の副支配人によると、あまりにも奇抜なデザインなのでものすごく使いづらいとのこと。円形のビルの中に劇場をぐるりと取り囲んだ形で通路があるので、劇場の袖は左右ともほとんど無し。搬入口も円形ビルの外からで、一般の人が通る通路をまたいで運び込まなければならないとのこと。もっとすごいのは楽屋。通路をまたいでエレベーターに乗り2階まで上がらなければ楽屋へは行けないので、衣裳に着替えた役者たちはそのままの姿で通路を通って舞台袖に入るという、信じられない構造になっているのだ。見学を終えて一同の感想は、“イギリスにも、設計家のエゴによるひどい劇場はあるのだな〜”と妙に納得(写真10)。
(写真10)
以上
下斗米 隆