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イギリスの地方劇場及び英国芸術評議会の各種事業活動調査報告書その4

 
2014-10-22
仙南芸術文化センター(えずこホール)所長 水戸雅彦


6月5日(木)ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス(WYP)2日目

WYP二日目。劇場の近くに借りているビルで開催しているファースト_フロアを中心に、さまざまなお話を伺う。

ファースト_フロア:ニート向けのプログラム。11~19歳(一般)、14~25歳(学習障がい者)を対象に、音楽、ドラマ、美術他10のアクティビティが日替わりで用意されている。金曜日にはさまざまなところから40人ほどの若者たちが来て、みんなで歌を歌うプログラムもある。誰でも申し込みなしで気軽に参加できる。オープンデイという見学の日も設けられていて、誰でも参加できる。このプログラムの優れているところは、このプログラムを受けることで大学の受験資格を取得できるところにある。学校に行っていない若者たちをアートで元気づけ、社会への道筋を作っていくプログラムである。また、このプログラムのアウトリ-チも実施している。
場所はWYPの近くのビルの2階にある。まさにfirst_floorである(イギリスでは1階はground floor)。おそらくこの言葉には最初の段階というような意味が込められているのだと思う。部屋は3つのクリエイティブスペースに区切られており、取り払うと大きなスペースが出来上がる。また、仕切り壁はホワイトボードで作られていていろんな風に活用できるようになっている。
前室のグリーンルームには、子どもたちに向けて「これから何したい?」「今日のセッションはどうだった」「ファースト_フロアでいい思い出は?」「ファースト_フロアは君にとってどんな感じ」と言ったシートが貼ってあり、それに子供たちが感想を書いた付箋がたくさん貼ってあった。「lerievdほっとした」という付箋が目に付いた。
ちょっとだけ見学させていただいた。問題を抱えている子も多いので撮影は厳禁。何組かの子どもたちが、ドラマのようなセッションを行っていた。その一組がまだ途中だけれども作品を披露してくれるというのでみんなで見せてもらった。二人の女の子が背中合わせでセリフをそれぞれ喋る。次に体勢を入れ替え90度に並んでまたセリフをそれぞれ喋る。そしてまた角度と向きを変えセリフをそれぞれ喋る。セリフの意味は分からない。しかし、その立ち位置と二人の女の子の位置関係から、うまくコミュニケーションできない二人が少しずつコミュニケーションできるようになっていく過程を描いてるんだな、と推量される。おそらくそうなのだろうと思う。わけもなく胸が締め付けられ目頭が熱くなった。

ユースシアター:若者向け劇団。参加オーディションはない。インターネットで申し込む。作品は、社会的に問題になっていることを取り上げている。前回は「girls like that」という作品でリベンジポルノを取り上げた。ネットでボーイフレンドにヌード写真を送ったらネット上に公開されたというお話。この作品を見たyoung mindという慈善団体が、ぜひ政治家に見せるべきだと主張してくれて、国会の政治家に前で上演された。またシナリオは出版された。新作はpronounトランスジェンダー(性同一性障害)の話。これも出版されている。また、メンバーの何人かはWYPのシアター(プロの演劇団体)にも出演している。更に、リーズ市内へのアウトリーチも行っている。
作品の集中稽古は8時間×20日間。夏休み、イースター等学校の休みを利用して4日間×5回で実施している。現在、参加者は20人、3回遅刻したらミーティング、休む子、セリフを覚えてこない子には、休団も含めミーティング。
キーワード:チームワーク、コミュニケーション、取り組む姿勢、人生を歩むスキル。

Refugee boy(難民の少年):演劇作品。14歳のアレン少年は、ホリデイだと父親に連れられてロンドンにやって来る。親は「祖国では命が危ないからお前はここで生きなさい」という書置きを置いていなくなる。その少年のお話。この作品上演に合わせて、難民の置かれた状況を知ってもらう活動や、難民の女性の合唱プログラムを展開。難民の女性たちは、言葉もわからず、友達もいない状況の中から、同じ境遇の仲間を得、言葉も覚えながらイギリス社会に溶け込んでいく。このことによりたくさんの難民女性が救われたと話している。

ビューティフル・オクトパス・クラブ:成人の学習障がい者の運営するディスコ(ナイトクラブ)。若者たちはハチャメチャな衣装で参加し楽しむ。

1990年WYPオープン当時からあるミッションは、「地域と繋がるということ」。そして、「全国的に評価の高い作品を制作するということ」。これらのことは連綿と引き継がれ、年々その内容は広がりと深みを増しているようである。


▲ファースト_フロアのあるビル


▲ファースト_フロアについて説明を受ける


▲WYPの様々な事業の説明を受ける。


▲WYPの優れた事業に「シアターサンクチュアリ賞」が贈られた。

「その5」へ続く
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