• HOME

イギリスの地方劇場及び英国芸術評議会の各種事業活動調査報告書その3

 
2014-10-16
報告者:仙南芸術文化センター(えずこホール)所長 水戸雅彦

6月4日(水)ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス

研修三日目、いよいよウェスト・ヨークシャー・プレイハウスである。
haydays を見る。「輝かしき日々」というような意味合いである。これは毎週水曜日に開催される、55歳以上を対象にしたプログラム。25年目。1回の参加費1ポンド50ペンス、誰でも参加できる。会員制で300~350人が参加している。内容は、歌、ドラマ、絵画、工芸その他18プログラムが1日の中で並行して開催されている。講師はプロのアーティスト。年間3期に分かれていて、それぞれの期末に1日かけてすべてのプログラムの発表会、展示会を行う。展示作品は販売もし売り上げは市に寄付される。プログラムは12週連続で行うものと単発のものがある。プログラムを作るにあたっては、参加者の中からアドバイザーを選び、アドバイザリーグループが職員と相談しながら一緒に作っていく。最近、認知症向けのプログラムも始めた。

最初に見学したのは、アートの講座、エ ントランスを入ってすぐ右の階段を上がったところのレストランの一角に、特設大テーブルが設えられ、そこで50人ほどが、絵画、版画、彫刻、コラージュな どの作品を作っている。レストランの一角である。すぐ隣ではお茶を飲んだり、食事をしている人たちもいる。最初少々違和感を感じたが、そういうものだと思えばそういうことなのだと妙に腑に落ちた。お茶を飲んでいるおばあちゃんに声を掛けられた。
「どこから来たの?日本、そう、日本に行ったことがあるわ。なんていったかな、オザカ?それと北京にも行ったことがある。朝みんなで太極拳をして たわ」
その隣のおばあさん、
「あたしたちいくつの見える?」
う~ん難しい質問ですね。というと、
「隣のこの人は90歳なのよ。それでこっちの二人は80歳越えてるの」
え~ほんとですか。信じられない。若いですね~。というと、大喜びでにこにこ笑いながら、
「私たちはここでお茶飲んでるの。あっちの若い人たち(どう見てもみんな60~70歳以上)は作品作ってるけどね」
と楽しそうに話す。

次に見たのがアニメーションのコース。三脚にデジカメを取り付け、テーブルの上にある切り紙の人形や何かを少しずつ動かし作っていく、根気のいる作業である。二人のお年寄りが自分の作品をデジカメのディスプレイで見せてくれた。これがすばらしいのである。かなり質が高い。正直驚いたと同時に、ひょっとしたらどこでもだれでもできるのではないかとも思った。デジカメの普及のお蔭といえるのだろう。そしてもう一つダンスのクラスを見学 した。この日はフラメンコを練習していたが、期ごとに内容は変わるのだそうだ。私たちが入って行ったらまだ完成してないけどと言いながら、途中まで出来上がったダンスを見せてくれた。ほとんどの人たちが70~80歳以上、みんな笑顔で若々しく踊っている。
何人かに話を聞くと
「いろんなダンスを経験できて楽しい」
「20年通っている」
という。そういえば、お茶を飲んでいたおばあさんももう20年通っているといっていた。

昼食時には、レストランがお年寄りたちで溢れかえる。200人はいるだろうか。みんな楽しそうに談笑しながら 食事をとっている。それぞれ話題に花が咲き乱れとても賑やかである。
午後からは、午前とは全く別のプログラムが開催される。午前午後、2つのプログラムに参加してい人たちも多いという。

まず、歌のクラス。60人ほどの男女が、ゴスペルの曲を三部合唱で練習していた。入っていくと一緒に歌えということでみんな席に座らされ、2曲ほどいっしょに歌った。隣のおばあちゃんが、
「私は今日眼鏡を忘れちゃってね。譜面が見えないの」
と言いながら譜面を見せてくれた。
全部ゴスペルなの?と聞くと、
「そうじゃない。今はそうだけどね」
歌う曲は期ごとにいろいろなのだそうだ。

次に見学したのがドラマのクラス。
お年寄りたちが壁際に並べられた椅子に横一列に座り、反対側の壁際にマイクのスタンドが横一列に置かれている。音楽に合わせお年寄りが一人ずつ前に出て来て、1行ずつセリフを読む、次の回ではセリフを読むお年寄りの後ろで、ダンスや、自分で考えたさまざまな身振りがシンクロして展開される。お年寄りたちの動きに、指導者が少しずつ演出のアドバイスを入れながら、セリフも変更したりふくらませながら作品が作られていく。発表会で上演する演劇作品を作っているのである。
このプログラムは、最初、懐かしのポピュラー音楽を聴いてもらい、何を思い出すか、というところから始まり、それぞれが単語や詩の一行を考えだす。それらを繋ぎ合わせ、大きな流れ、物語をつくっていくというやり方である。セリフを聞いていると、若いころの恋愛、懐かしい思い出、素敵だったダンス、今君はどこで何をしているのか、といった、若き日の恋愛の思い出に関する言葉が紡がれているようだ。恋、愛は永遠のテーマなのだなあと思った。

お年寄りたちはみんな元気で笑顔に溢れている。車いすの人たちも結構多い。ヘイデイズのプログラムの根底にあるのは、文化プログラムを通して地域の住民を孤立させないというところにあるのだと思う。だから1日に18ものさまざまなプログラムを開催しているのである。たくさんのプログラムを用意すれば来るお年寄りも多くなるということなのだと思う。

15時でヘイデイズは終了。次はバックステージツアー。WYPのホ-ルは350席と750席の二つがあるのだが、ステージは仕込中できちんと見れなかった。他の施設をいろいろ見て回った。一番圧倒されたのは、ワークショップ(工房)の広さ。大きな倉庫1つといった感 じ。えずこホールの大ホール全部くらいの面積がある。その他の施設も日本では考えられないほど十分なスペースがとられている。


▲アニメーションを作るお年寄り


▲ドラマのコース、お年寄りのアイディアから劇を制作中


▲ウェスト・ヨークシャー・プレイハウス外観


▲ワークショップは驚くべき広さである


「その4」へ続く
  • 閲覧 (1121)