世界劇場会議 国際フォーラム'97 実施概要


 「世界劇場会議国際フォーラム'97」は「世界劇場会議'93」の成果を踏まえ、 舞台芸術の振興とその社会基盤確立のため、「世界劇場会議国際フォーラム'95」 「世界劇場会議国際フォーラム'96」に続くシリーズ第三回目として、 1997年2月6日(木)のプレイベントを皮切りに2月9日(日)までの四日間、 愛知芸術文化センターを中心会場に開催された。
 今回は、これまで継続的に行ってきたいくつかの基本テーマ、メセナ、劇場管理者、 観客、アートマネージメント、劇場建設などをさらに深く追及するとともに、 「今、劇場は生きているか〜アジアと日本、伝統と創造の接点を考える〜」をテーマに、 焦点をアジアにしぼり、アジアの劇場間のこれからの展望と 将来のネットワーク化への可能性を探ることを課題とした。 参加者は二日間のセッションに延べ760名、プレイベント四日間に延べ200名が集まり、 四日間のフォーラム全体では約1000名の多くを数えることができた。 それぞれのセッションの詳しい成果については以下の通り。

セッション1「アジアの劇場サミット」

 世界はいま多文明、多文化の時代といわれる21世紀を迎えようとしているが、 中でも急速な経時成長を背景にしたアジア諸国が自らのアイデンティティを示すものとして文化、 芸術に注目し、それぞれの国の文化・芸術創造の拠点としての劇場の建設を盛んに行っている。 こうした潮流を初めて世に発信した画期的な会議が「世界劇場会議'93」であった。 今回のフォーラムでは、韓国、台湾、香港の三つ劇場と愛知芸術文化センターの企画・ 運営の実務者を一堂に集め、それぞれの劇場の設立の経緯、課題発表を行い、 その将来の展望を探るとともに、これらの劇場を中心としたアジアの劇場間のネットワーク形成の 具体的な方策を探った。

セッション2「創造と支援のめぐり愛」

 創造側と支援側双方を招き、 両者の結びつきを生々しく語ってもらうという狙いは成功したように思う。 創造側は、質の高い公演を目指す継続的な努力を語り、 その過程で支援者との心のふれあいの大切さを訴えた。 支援側も、心の通い合いが、支援を与える際の鍵であると延べた。 また、支援者は創造側から受け取るものの大きさを語り、創造と支援の関係が、 双方向のものであることを明らかにした。

セッション3「劇場機能との共生」

 舞台機構のハイテク化が進む現在、 そのメリットとデメリットを対立させるのではなく、 むしろ将来に向けてコンピューターが創造の即興性に対応できるという展望を持てば、 劇場機能との共生は可能であると結んだ。

セッション4「オペラハウスを考える」

 表記テーマのもと、服部基氏、清水裕之氏、 大下久見子氏、小栗哲家氏の4講師がそれぞれ舞台照明デザイナー、建築家、オペラ歌手、 舞台監督の立場で、自身の体験の上から欧米の様々なオペラハウスの事例について、 その生の姿を述べた。オペラハウスと一言で言っても、その在り方は多様であること、 その在り方は各オペラハウスについて必然の上に成り立っていることなどが話され、 我が国においても独自の在り方が模索されるべきであることと、 同時にオペラというインターナショナルな芸術を考える上では当然、 最低条件として押さえる部分があり、それが現在の状況では十分でないことが指摘された。

建築ワークショップ「明日の地域のアートセンターを考える」

 初めての試みとして、 一般の参加者から様々な分野の人々に呼びかけ、4つのグループを作り、 一定の条件のもとアートセンターをつくるとしたら、と言う仮定でグループ内討議を行い、 それを実際に建築家が設計図に落とし込んで行くという作業を二日間にわたって行い発表、 講評を行った。

情報ネットワーク「舞台芸術情報サロン」

 狙いは二つ。一つは民間・公立文化施設・ 団体からポスター、チラシ、パンフレットなどの宣伝資料、上演ビデオを集め、 展示と放映を行い合わせて情報交換と交流の場づくりをするということ。 結果は45団体から242種類の企画資料と8団体から9作品のビデオが寄せられた。 二つ目はインターネット、PC−VANを使った新しい文化芸術の情報交換の実演で、 これには愛知県文化情報センター、芸団協、NEC、NTTの多大な協力を得、 充実したサロンが実現できた。二日間のサロンの参加者は延べ100人を越え、 たくさんの出会いと情報交換が実現した。 これからはさらにこのサロンを充実させ 一つのセッションとして独立した活動へと発展させるよう努めたい。


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