世界劇場会議 国際フォーラム’96実施概要
「世界劇場会議 国際フォーラム’96」は、「世界劇場会議’93」の成果を踏まえ、 舞台芸術の振興とその社会基盤確立のため、 昨年度開催された「世界劇場会議 国際フォーラム’95」のシリーズ第2回目にあたり、 平成8年2月8日(木)のプレイベントを皮切りに2月11日(日)までの四日間、 愛知芸術文化センターアートスペースを会場に開催された。
三度目の今回は、いままでの会議を通して積み重ねてきた議論を基に、 「文化創造、交流の場としての劇場…その現状と未来像を探る」をテーマとし、 より具体的にパフォーマー、支援者、鑑賞者を巻き込んだ幅広いディスカッションが展開された。 参加者数は2つの特別セッション、6つのセッションの二日間で延べ約1,500人。 また、プレイベントのワークショップ「オーストラリア式演劇学校」、 公開トークショウ「近松心中物語」、ゲネプロ鑑賞会「オペレッタこうもり」の参加者を加えた 四日間の延総数は約2、500人であった。
今回は特に地域の演劇創造の諸問題にスポットを当て、 劇場と創造集団、劇場と技術、劇場を取りまく文化支援のインフラ問題等をメインに討議された。
会議第一日目は、特別セッション「明日の舞台芸術創造の地域ネットワークを考える」に始まり、 日本全国にいま建設されつつある数多くの劇場とそれぞれの地域で芽生えつつある 芸術創造組織・活動の有機的なネットワークづくりについて語られた。
セッション1では、「バブルの終ったいま、舞台芸術の社会基盤を哲学しょう」というテーマで、 主に表現の自由と公的支援の根拠とその在り方についての論議が展開された。
続いてセッション2「舞台芸術とメセナ」では、 バブル崩壊後のメセナの在り方についての議論がおこなわれた。
セッション5「舞台芸術と技術 劇場管理技術者をとりまく環境をめぐって」では、 前2回の討議内容を継続して行い、より具体的に様々な問題がクローズアップされた。
また、講師、参加者らが交流できるレセプションは今回も好評であった。
会議二日目は、海外特別セッション「舞台芸術創造をめぐる海外の現状と展望」で始まり、 中国、韓国、オーストラリア、ウクライナ共和国の4カ国の講師が、伝統と現代、政治体制の大きな変革、 新しいアイデンティティづくり・・・とそれぞれの大きな問題を抱えつつ、 しかし力強く創造活動に取り組む報告がなされた。
セッション3「経営と観客 芸術鑑賞をとりまく経済環境」では、 舞台芸術鑑賞費用についての家計当計上の報告をもとに、 一般市民の積極的な劇場参加の可能性について、特に主婦、障害者、 児童といった劇場弱者ともいえる層と劇場との関係の開発について、 現状の分析や改善の提言を含めて討論された。
セッション4「演劇…演じる人と見る人」では、 若い演技者集団による初めての試みとして演劇上演が行なわれ、 それをもとに演劇活動を継続していくことへの情熱と現実的な困難さが語られた。
セッション6「地域に専門劇場は必要か」では、 一時期の多目的ホールへの反省とその後の専門劇場建設の功罪の中での諸問題を 具体例を挙げながらの討議がなされた。
三回目を迎えた本会議では、ゲネプロ鑑賞はもちろん、 ワークショップや民間劇場とのタイアップによる公開トークショウでイベント性を図ることにより、 一般の市民層にも広がりが出てきた。今後ともさらに一般への浸透、定着化を図りながら、 より質の高い会議の実現を目差していくことが必要である。 また、単に一過性の講演会に終わらせることではなく、 数々の諸問題について議論の積み重ねをこれからも続ける必要があり、 今回はより具体的な議論継続のまさにスタートに立ったと認識した。 参加者の地域的な傾向や職業ジャンル等がかなり広がりを見せており、 今後の確かなな手ごたえがあった。