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世界劇場会議名古屋 フォーラム2015報告

 
 
2015年5月29日(金) 受付13:30~
愛知県産業労働センター「ウインクあいち」1202会議室
主催:NPO法人世界劇場会議名古屋 「世界劇場会議名古屋フォーラム2015」実行委員会

【プログラム】
14:00~16:15
Session-1 「劇場の天井は大丈夫か?」
 講師
 本杉省三 日本大学理工学部教授
 事例報告者
野島秀仁 鹿島建設(株)建築設計本部 建築設計統括Gr.
 進行
 松本茂章 公立大学法人静岡文化芸術大学文化政策学部/大学院文化政策研究科 教授
16:30~18:45
Session-2 「劇場で働きたい!」
 話題提供者
 籾山勝人 長久手市文化の家事務局長
 中 康彦 損害保険ジャパン日本興亜(株)・ひまわりホール係
 児玉道久 (株)若尾綜合舞台代表取締役
 山田 純 名古屋芸術大学音楽学部教授
 進行
 山出文男 NPO法人世界劇場会議名古屋副理事長
19:00~20:30
交流会

Session-1「劇場の天井は大丈夫か?」報告
参加者約100名の超満員で開催された。まず日本大学教授の本杉省三氏の講演があり、続いて鹿島建設の野島秀仁氏の講演があり、最後に松本茂章氏(本フォーラム実行委員長)の進行で質疑応答の時間があり約2時間半を参加者みな熱心に聴いていた。
テーマは、「劇場の天井は大丈夫か?」。
このテーマの趣旨を理解するため、先に状況を整理しておく。

1.2011年東日本大震災の際、劇場などの大空間の吊り天井の脱落事故が相次いだ。

2.建築基準法施行令が改正され、第39条に次のような特定天井の規定ができ、2014年4月1日から施行となった。

特定天井(脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。以下同じ。)の構造は、構造耐力上安全なものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

上記の国土交通大臣が定める天井については、国土交通省告示第771号で定められた。特定天井の規定は簡単に表現すると以下のとおり。
吊り天井であって、次のいずれにも該当するもの
(1)居室、廊下その他人が日常立ち入る場所に設けられるもの
(2)高さが6mを超え、水平投影面積が200㎡を超えるもの
(3)天井面構成部材等の単位面積質量が2kgを超えるもの
※特定天井の構造方法の基準については省略

3.既存の多くの劇場・ホールの天井は特定天井に該当することから、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものか国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならないことになる。
そして、2014年4月に法令が施行されたことにより、全国の既存のほとんどの劇場・ホールの天井は既存不適格となってしまった。

4.平成26年度国土交通省告示第1073号により、2015年4月1日より特定天井が建築物の定期調査報告の対象となった。

以上の状況を踏まえ、本フォーラムのセッション1のテーマを「劇場の天井は大丈夫か?」とした。

講師の講演は、具体的な事例を交えてプロジェクターを使用しながらわかりやすく解説されたが、ここでは具体的な内容紹介は省略し概要を紹介する。




講演1「劇場の天井は大丈夫か?」
本杉省三氏(日本大学理工学部教授)

劇場・ホール天井の特徴
1)単位面積当たり重量が重い
2)傾斜面が多い多様な断面形状
3)不整形な平面
4)天井懐背が高い(シーリング投光室等の要求)
5)位置により大きく異なる天井懐背(吊長さ)
これらは、劇場・ホールの機能・性能が求める必要条件であるが、地震に対してはマイナス要因となる。

劇場・ホールの天井問題における背景
1)施設の老朽化
ホール建設ラッシュの1970年代から40年程度経過し大規模修繕・施設更新時期に
2)客席天井等に関する新たな法令施行(強化)
2014年の特定天井の規定と2015年からの定期調査報告の義務化
3)大型地震対策の欠如
旧耐震基準のままの施設が16%程度(2012/13年JATET/公文協調査)
4)計画修繕・改修・中長期修繕計画が未整備
  計画ありは11%程度、計画中を含めても3割程度(2012/13年JATET/公文協調査)
5)少子高齢化と自治体の収入減
6)どこでも起こりうる大地震
4つのプレートが重なり合う日本では、いつどこでも大地震が起こりうる。

天井脱落によって他人に損害を生じさせた場合、民法第717条(賠償責任)により、建物所有者・管理者は故意・過失を問わず責任を負うことになる。東日本大震災の時には定期調査を実施していて責任を問われなかった事例もあった。しかし、新たな法令ができたため、今まで以上に責任が問われる可能性がある。
無関心な所有者・管理者も多いが、意識を変える必要がある。

単に劇場・ホールの天井をどうするということだけでなく、文化活動が社会の中でどう受け入れられていくかを考える必要がある。劇場なんて必要ないという人もいる中で、劇場は必要だと思ってもらえるような活動を展開していかなくてはならない。今まで以上に丁寧なつくり方、管理運営が必要であり、これを機に施設と活動を考えていくとよい。


講演2「既存コンサートホールの居ながら天井耐震改修」
野島秀仁氏(鹿島建設株式会社 建築設計本部 建築設計統括Gr.)

特定天井の大臣認定第1号となったサントリーホール大ホールの天井耐震改修についての報告。

改修する前提条件が、開館しながら工事を行うこと。休館しない理由は、2年先まで予約で埋まっていること。貸館なので休館すると公演が他のホールに移ってしまい戻ってこなくなること。音響に定評のある名ホールは、改修されるとたとえ良くなっていても音響が悪くなったという評判が立つこと。これらの理由により休館せず、すべて夜間工事により施工された。
ビス1本でも天井に忘れると響きに影響するので、搬入部材数量はすべてチェックし、施工した数量と残った数量を毎回確認した。毎日施工終了時にパイプオルガンを鳴らし音響の確認を行った。

東日本大震災後、様々な調査をして設計をして2013年8月に施工を開始し、約14ヶ月かけて竣工した。
特定天井の正式な基準が出る前に設計し着工したものである。しかしクライアントからは法律に沿ったもので大臣認定を取得するよう要求された。
施工しながら性能評定を受け、途中評定委員の指摘を反映させながら施工し、竣工とほぼ同時に性能評価を受け、その後2015年4月13日に大臣認定を取得した。

【セッション1の様子】





Session-2「劇場で働きたい!」報告

話題提供
 はじめに、各話題提供者がそれぞれの立場から組織形態や業務内容の紹介を行った。また山田氏からは大学の教育目標やカリキュラムの紹介が行われた。それぞれの概要は以下の通り。

【籾山勝人氏 長久手市文化の家事務局長】
・直営なので、直接雇用はない。文化振興だけでなくまちづくりの一翼を担っている。
・事務局で約20名、施設管理の職員を含めると50名ほど働いている。その他に創造スタッフを1年契約で7名雇用している。
・施設運営には専門家が必要だという話があるが、当館は公務員でありながらきちんと成り立っている。基本的には文化の家に来てから学んでもらっている。
・公務員試験については、長久手市は最初にグループワークなどの試験を行い、教養試験は最後に行う。人間性・コミュニケーション能力、特筆すべき能力があるとよい。

【中 康彦氏(損害保険ジャパン日本興亜㈱・ひまわりホール係)】
・職員数は、1.5人。私のほかにアルバイトを4月から雇っている。それまでは1人でやっていた。愛知人形劇センターに事実上、運営委託しており、公演時はボランティアスタッフに入ってもらう。技術・音響・照明は1人、つまり私がすべて面倒を見ている。職員として新たな採用は行わない。私も正規ではなく嘱託として年間契約で働いている。

【児玉道久 ㈱若尾綜合舞台代表取締役】
・1949年創業で、中部における舞台制作を支援する会社である。照明・音響・映像などの部門に分かれ、たとえば照明の中でも様々な部門に分かれている。現在は芸術文化創造にかけられる予算が少ないため、舞台美術部門では空間デザインなどの仕事も請け負っている。
・若手社員は複数部門を兼ねており、専門的な技術力よりも、最低限のマナー、コミュニケーション力、感受性、ワード・エクセルなどの基本操作が出来ることを重視する。
・資格については、照明技術者技能認定や舞台機構調整技能士(音響)など、様々な資格が取れる。学生のうちに取得可能な資格もあるので目指してみるのもよい。

【山田 純 名古屋芸術大学音楽学部教授】
・名古屋芸術大学ではアートマネジメントコースを設置し、インターンシップを重視している。近年受け入れ先の方から大学に、インターンの受け入れを申し込む例が増えている。文化庁の声掛けで人材育成に力を入れている背景がある。しかし、インターンシップが増えても、実感としては何も変わっていない。

セッション
 山出文男氏の進行のもと、劇場での雇用状況や求められる人材などについて、登壇者でセッションを行った。
学歴よりも「コミュニケーション能力」が採用において最も重視されていること、雇用形態が非常に厳しく定着率がよくないこと、非正規雇用が増えていることなど、劇場で働くことに関する意見交換が行われた。また、インターンシップなどの機会を利用すること、劇場を直接訪問して話を聞きにいくこと、芸術鑑賞を常日頃からやっておくことなど、劇場勤務を志望する学生に向けられた具体的なアドバイスも行われた。

会場からの質問
 質問用紙に書かれた内容をもとに、登壇者や会場から回答を求めた。活発な意見交換が行われた質問について、以下に抜粋する。

【質問:コミュニケーション能力とは具体的にはどういうものか】
・会話が出来ない、人と人との付き合いが出来ないなどは困る。挨拶するとか相手の名前を覚えるとか基本的なことを大学でも指導している。これは業界で絶対に必要なこと。
・クライアント・演出家の要求を受け止め、部下に伝達できるか。加えて、相手を気持ちよくできるかどうかが重要。
・指示を受けたときに、分かったのか分からないのか、どちらなのか分からないのが困る。
・1歩踏み出す能力、その勇気のある人を重視したい。1つエピソードをあげると、以前、情報誌の記事を見てある学生が実際に劇場を訪ねて来た。一度面接をしてから、仕事をしてみないかと誘い、臨時職員として雇用することにつながった。何より実際に訪ねてきてくれたのが嬉しかった。足を運んで話を聞くことが大事。

【アートマネジメントとはどんな仕事か】
・企画と運営であり、それを一緒に進めていくこと。
・芸術家は基本的にプレイヤーなので、どういったところで活躍・発表の場を持てるのか学ぶ機会が少ない。我々で話し合い、色々な場を設ける。
・大きく言えば、劇場経営。現場に経営感覚がないのが課題となっている。
・組織管理・人事・予算獲得・どのような成果をあげるかなど、組織管理や経営という社会科学としてアートマネジメントを捉える視点もあることを知っておいてほしい。

【音楽の知識がなくても、音楽の業界で働けるか】
・音楽の業界で成功したいというのは星の数ほどいる。芸術家を目指すなら本人の才能が大きい。テレビなどで華やかに活躍している人の多くは、運よく売れたか、楽器の演奏がもの凄く巧いか、コネがあったか。音響・レコーディングについては、専門学校などで知識・スキルを詰め込むよりバイトをしたり師匠を見つけたりして現場で経験することが大事。

【その他】
・文化・劇場と関係のない学部にいるかどうかは、一般的には関係ない。
・特別なスキルは必要なく、多くは簡単なワード・エクセルの技術。出来ればイラストレーターやフォトショップをさわれることが求められる。

まとめ
最後に、セッション2のまとめとして、話題提供者から一言ずつ発言をお願いした。
学生へのアドバイスとして、組織管理・助成金獲得などのより広い仕事に目を向けること、アルバイトやインターンシップをやってみること、いまのうちに自己の感性を磨いておくことが挙げられた。憧れと熱意をもって、夢を実現してほしいというメッセージを送り、閉会した。

【セッション2の様子】
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