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公共劇場を考える  イギリスの地域劇場 ウエストヨークシャー・プレイハウス

 
2012-12-12
    NPO法人世界劇場会議名古屋 理事長 下斗米 隆

 去る10月3日(水)、4日(木)、イギリス北部リーズ市のウエストヨークシャー・プレイハウス(WYP)を訪ねた。来年2月に開かれる「世界劇場会議国際フォーラム2013」のパネラーをここの経営総監督シーナ・リグリーさんにお願いすることと、今年2月の世界劇場会議国際フォーラムで議論された「公共劇場」の一つのモデルとしてのこの劇場を実際に見るためだ。
 この劇場については、日本でもいろいろ紹介されているし、世界劇場会議国際フォーラムでも1998年に当時の経営監督マギー・サクソンさんをパネラーとしてお呼びしている。だから知識としてはかなりわかっているつもりだった。それは、非常にレベルの高い創造活動を行っていると同時にコミュニティープログラムなど社会的活動を数多くやっている劇場。社会に開かれた劇場。地域としっかり結びついた劇場などなどだ。しかしいざ実際に現地に行って見たものは、想像をはるかに超えたものだった。  
 朝の10時、劇場の正面を入ってまず驚く。人がもう大勢行き交っている。話しをしたり、コーヒーを飲んだり、とても劇場入口の朝の空間とは思えない賑やかさ。今日はたまたまある会社のイベントに貸し出しているのでカフェが使えないけれど、人の賑やかさはいつもこのぐらい、と説明してくれたのは芸術開発部部長のサム・パーキンさん。特に今日は水曜日で、本来なら「HEYDAY」というこの劇場を代表するお年寄りを対象としたワークショップが開かれていて、いつも300人くらいのお年寄りでいっぱいになる日なのだそうだ。
 日本の「公立劇場」の一般的なイメージは、コンクリートとガラスで出来たモダンなビル。街の中であれ、田んぼの真ん中であれ、いかにもそれらしくデンと構えているいわゆる文化の殿堂で、いつも建物全体がひっそりとして、特に公演のない日には人の気配などまったくしない、いわば「閉じられた空間」だが、ここウエストヨークシャー・プレイハウスはまったく違う。人が、大勢の人がごく普通に行き交っている。劇場には、日本でいうホワイエが無い。それに変わるのが入口を入ってすぐ広がる大きな空間、カフェだ。300から400人が座れる椅子とテーブルが置かれ、ビュッフェ式のカウンターから飲み物や食べ物を自分で運ぶ。ここは朝の9時から夜の7時までオープンしており、観劇に関係なく近くの人が朝食、ランチが楽しめるようになっており、併設されているバーは夕方の5時半から終演まで開いているとのこと。つまり、この劇場はごくごく普通の社会生活の中の一部なのだ。日本で聞いていた「地域に開かれた空間」という意味を実感として感じられる空間がそこにあった。
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